CHIAKIほおずき
2015年度テーマ「生活機能向上の取り組み」

発表テーマ

「家族への感謝」

発表者:N・K
CHIAKIほおずき神戸玉津
デイサービス

目的

対象者 A様 要介護3
対象にさせて頂いたA様は、要介護3で認知症日常生活自立度Ⅲaです。
ご主人と共に自営業をなされ、会社の経理もされていたそうです。
手先が器用で趣味では手芸や工作なども楽しまれていたそうです。
社交性に富み、交友関係も広く、誰からも慕われていたそうです。
去年の夏頃からA様のご様子に次第に変化が見られるようになってきました。
あれだけ社交性があったA様ですが、他の方々と会話もあまりされなくなってきました。
デイに来られてもテーブルに突っ伏してふさぎ込むことが多くなってきました。
以前は楽しまれていたゲームや工作などのレクも「こんなもん馬鹿らしい」とされなくなってしまいました。
A様の笑顔はどんどん少なくなってきました。
外出行事での集合写真などでもA様お一人だけ笑顔が見られないなど、日々のデイご利用時の写真でも明らかになってきました。
また、「財布を盗まれた」など、物盗られ妄想が多くなってきたのも特にこの頃です。
お食事に関しても「私のだけ嫌がらせで固いのがいれてある」などと被害妄想も大きくなってきました。
「泥棒だらけのところにはおられん」などと言われるようになり、帰宅願望も見られるようになりました。
また、「息子は死んでしもうたから私一人や」、「娘が私を悪いようにしとるんや」などと、ご家族に対しての妄想なども口にされるようになりました。
私たち職員もA様の変化に戸惑い、どう接していけばよいのか悩み、ご様子をケアマネや家族様にお伝えし相談していました。
そんな中、A様がポツリと漏らした言葉…「最近頭がおかしいんや…」
A様自身も自分の変化に戸惑われておられたのです。
私たちは何が原因であるか考えました。
認知症状が進んできており、それに伴う
短期記憶障害
物盗られ妄想
被害妄想
また、その頃、家族との同居の再開など複雑な生活環境の変化がありました。
というのは以前は息子様夫婦と同居されていたのですが、事情で奥様が離れ、息子様二人と同居されていました。
ところが春頃から息子様の奥様が同居を再会し、A様の生活も大きく変化がおきることになりました。
「笑顔がいっぱいだったA様に戻っていただきたい」
A様の認知症状の進行と家族環境の変化が、心身供に大きく影響していると考えました。
デイサービスを利用されながら在宅生活をするA様に私たちが関われる時間は限られていますが、
A様が抱える様々な不安を軽減しながら、家族様に感謝の気持ちをご自身で伝えることができれば、
A様の笑顔も戻ってくるかもしれないと思いました。
「A様が得意としていた手芸で何か作品を作って家族様にお渡ししてみてはどうか?」

方法

まず初めに認知症状が進んできているA様の、現在の手芸の腕を見てみることにしました。
A様を手芸にお誘いしても、最初はなかなか興味をしめそうとはされませんでしたが、
「自分の道具持ってきてへんからできんわ」
「最近指がかたくてどうも難しいわ」
とおっしゃいながらも、手にとって挑戦されました。
職員と一緒に針通しの練習や糸選びなど手芸に関する練習を始めました。
なかなか手先が思うように動かないことに対するいらだちも見られていましたが、手芸に取組まれるようになってきました。
無気力だったA様がだんだんと乗り気になってくださってきました。
私たちは取り組み当初、A様にまた「やかん敷き」のようなものを作成していただければと思っていたのですが、
A様の手芸に対するやる気と、手芸経験から私たちはもっとすごいものが作れると確信しました。
完成は真冬ということで、雪だるまのぬいぐるみを提案しました。
「雪だるまやったらかわいいね」と笑顔で快諾されました。
完成したらお嫁さん達にお渡しして飾ってもらいましょうということになりました。
こうして順調に作業が進んでいました。
ところが、A様の認知症状が度々、あらわれてきました。
「私は何でこんなんしとるんやったかな?」
「何を作っとるんやったかな?」
「何か作れって言われたからやっとるのにさっぱりわからん」
「いっつも私だけやらされとるんや」 と次第に混乱されてくることがありました。
そこで、何のぬいぐるみを作っているのかわからなくなるため、職員が雪だるまの絵をかいて参考にしていただくことにしました
そうすることで以降は落ち着かれました。
「私ね、今これを作っとるんよ」
A様が他の利用者様に笑顔でおっしゃっていました。

結果

現在では…
あれだけ活気が無く、無気力だったA様が作業に熱中されるようになりました。
作業は順調に進むようになりました。
また、手芸以外の他のレクなどにも参加されるようになり、他の方との交流も増えてきました。
一生懸命に作業されるA様に、他の利用者様も興味が出てきたご様子でした。
いつもは不穏でフロアで大声で怒鳴られている利用者様も興味心身で「何をやってるんだ?」と
一緒のテーブルに来られてA様の作業を静かに見守られておりました。
やがてA様の手芸を見て「私もできるかわからんけどやってみよかな」と言われる利用者様もでてきました。
A様が「こうやるんよ」と手ほどきしながらお二人でワイワイと手芸をされていました。
雪だるまらしい形が出来た頃、A様自身から職員に対してアイディアを出されるようになりました。
「首巻きを赤い毛糸で作って巻いたらかわいいんじゃない?」
そういって赤い毛糸を取り出し、雪だるまのマフラーを作り始めました。
「この子一人やったらかわいそうやからもう一人作ろうかな」
そう言ってもう一体のぬいぐるみ作りにも取り掛かられました。
A様自信作の雪だるまです。

ゆきだるま

 

 

 

 

 

 

 

「青い方が男の子やったんやけど赤い方が大きいなってしまった」
「まぁ、女の子の方が男の子よりも大きいこともあるもんな」と笑われていました。
ついに家族様にお渡しすることになりました。
事前に家族様にはお渡しのお話もさせていただいています。
A様が家族様のために作った雪だるまを見て、家族様も出来栄えに大変驚き、とても喜ばれていました。

まとめ

笑顔も見られるようになり、レクなどにも参加されることが多くなりました。
「Aさん、この前はすばらしい雪だるまのぬいぐるみを作ってましたね」
「そうだったかね?私なんでもできるんよ、今度作ってあげようか?」
そうおっしゃるA様の笑顔には自信が満ちている気がしました。
私たちは日々の業務に追われるあまり今まで気づいていませんでしたが、こうして一人の利用者様としっかりと向き合うことで
認知症だからできないということは決して無く、
ご本人様がまだまだ出来ることは沢山あり、それを実際に実現できる機会を作ることで、
ご利用者様の在宅生活の向上に繋ることが職員一同よくわかりました。
これを機に今後も様々な取り組みを継続していきたいと思います。
今後、A様が神戸玉津のグループホームに入居されることとなった場合ですが、
今までグループホームの入居者様たちとも沢山交流を持ってきたことや
料理の下ごしらえや掃除など皆様との共同生活をする訓練もされてきたこともあり、A様にとって大きな不安はないかと思います。
デイサービスでのA様の過ごし方に合わせながら慣れていただき、
A様の社交性を生かすことで、グループホーム全体もより明るく皆様に笑顔が多くなるかと思います。