CHIAKIほおずき
2017年度テーマ「よりよい食事環境」

発表テーマ

「笑顔の食卓」

発表者:M・N
CHIAKIほおずき姫路津田
ショートステイ

目的

対象者:A様 69歳 女性 要介護4
 主な病名
鬱病 アルツハイマー型認知症 骨粗鬆症
*認知症として躊躇な症状は不明瞭
ご家族はお姉さまのみ
 <A様がショートステイをご利用されるようになったきっかけ>
高齢者専用住宅での行動《頻回な電話、部屋からの頻回な出入り、牛乳の摂取(下痢になる)、
トイレの頻回、ペンの所持(転倒したら危ない)、食べ物をかきこんで口腔内へ詰め込む行為》等を理由に、抗精神病薬が増量となる。
同時期に変更となったケアマネージャーが、服薬頼みによる高齢者専用住宅での生活は困難と判断。諸事情もあり、生活の基盤をどこにするか検討する中、自室で転倒し大腿骨骨折により入院。
退院後ショートステイを利用しながら生活するも、A氏は高齢者専用住宅に戻りたくない気持ちが強く
帰宅前日より不穏みられ、朝食時にちぎったパンをのどの奥に詰めこまれ、救急搬送となる。
(静止を振り切る等意図的な行動にもみられたが、本人に自覚は無し)
こういった経緯により、施設入所の申し込みと、入所が決定するまでの間、継続的にショートステイを利用する事となりました。
A様が服用されている 抗精神病薬内容
・ベロスピロン塩酸塩錠4mg(朝昼夕各1)
・ヒルナミン錠5mg(夕2状態により5まで可)
・クエチアピン錠12.5mg(朝夕各1)
・リスパダールOD錠0.5mg(朝夕各1)
A様の現在の課題
・ペンの所持
(A氏は声が小さく早口で聞き取りにくいため、ペンはコミュニケーションのツールとして必要。バインダーにメモ紙を挟んでテーブル上に置いて使用。使用状況確認するも危険は無い。)
・口腔内の状況
(すぐ義歯を外される)
・噛まない 速い 流し込む
(咀嚼回数が少なく、口に運ぶ(かきこむ)速度も速い。声かけでは応じてもらいにくく、
普通食提供時は必ず横に付き添いペースコントロールが必要。)
A様・お姉様の想い
《A様》
ペンとメモを持っておきたい。牛乳が飲みたい。寝る前にお経をあげたい。できれば普通の刻んでいないご飯を食べたい。
《お姉様》
本人のストレスをとりのぞきながらサービスを考えてほしい。自身も腰痛があり、主人が高齢ドライバーで出来ることも減っている。施設入所も視野に入れて今後を考えたい☆これらの課題が解決出来る様に取り組んでいきたいと思います。

方法

《取り組み内容》
◇食事形態
◇テーブルの環境
◇食事意欲
◇咀嚼の練習・速度のコントロール
◇服薬内容
◇食事形態
基本は、主食:おかゆ 副食:刻み
本人の意向をうけ、マンツーマン対応が可能な時のみ普通食に切り替える
*朝・夕は刻み食、おかゆ(パン粥)とする
◇テーブルの環境
同じテーブルの利用者配置は長期滞在者を配置し見守りや声かけの協力をお願いする。
側に置いておくと安心する物は当日の利用者状況を踏まえ、可能な範囲で設置する。
◇食事意欲
着なくなった古着の中から好きな柄を選んでもらいエプロンに加工。
背面をカットして割烹着の要領で使用。汁物等の吸収をよくする為に内部はタオル生地にしました。
◇咀嚼の練習・速度のコントロール
普通食で咀嚼の練習
必ずマンツーマンで実施。3口目で一度静止して噛んでもらう。
食べだすと声かけでは止まらないので手を添えて静止を促す。
一度背筋を伸ばして目線を食事から職員へ、目を合わせアイコンタクトを図る。一呼吸おく時間を練習。
◇服薬内容
主治医変更。 A氏の服薬による心身への影響や生活情報が少ないためショートステイでの様子をみながら今後少しずつ調整を行う事を指示受ける。
再度受診、服薬の変更ショートステイでの様子と受診中も傾眠強い様子を受け服薬内容の変更となる。
   <変更前>                         <変更後>
ベロスピロン塩酸塩錠4mg(朝昼夕各1)            ベロスピロン塩酸塩錠4mg(朝昼夕各1)
ベロスピロン塩酸塩錠4mg(朝昼夕各1)            ヒルナミン錠5mg(夕1)
ヒルナミン錠5mg(夕1)        ⇒       クエチアピン錠25mg(眠前)
クエチアピン錠25mg(眠前)                リスペリドンOD錠1mg(眠前)
リスペリドンOD錠1mg(眠前)
 ※ベロスピロン変更なし ヒルナミンが1錠に変更 他は1日の分量は一緒、服用時間が朝夕中止で眠前に変更となる

結果

現在のA様の様子
刻み食(職員見守り・声かけによるコントロール)
食事速度
10月平均7.9分 1月平均14.5分。
咀嚼回数(静止時から飲み込み確認までの回数)
10月平均2回 1月平均2.8回
普通食(常時職員付き添いコントロール)
食事速度
12月平均15.8分から1月平均18.7分。
咀嚼回数(静止時から飲み込み確認までの回数)
12月平均3.7回 1月平均3.9回
☆静止コントロールをはかりながら、食事時間、咀嚼回数は少しずつ増えています。
12月より意思疎通時の反応速度が上がっており、これは服薬時間が変更となった影響があると考えられます。
特に食事中の声かけに対する反応がみられるようになった事と、飲み込んだ事を自ら意思表示するようになった点や、エプロンは黒地に花柄のものが良いとの事で、汚さないように使おうとされ、丁寧な食べ方への意識変化にもつながっている様です。
同じテーブルの利用者の協力を得ながら、他者の声かけに反応を示す場面が増えた事で周囲に目が向く事も増えています。
食卓上の空間に関しては、A氏は使い勝手を優先したい気持ちがある為、メモ・ペン・ティッシュは目に見える範囲に置くほうが良い。
他者からのコミュニケーションや自分の意志表示が増えつつある中で、
A様の周囲を見渡す視野や感覚が広がり、食事のペースも少しずつ変わっていったと考えられます。

まとめ

《今後に向けて》
A様の場合は、安全を優先すると同時に、本人が望むような食事環境を一緒に築いた事で、
A様が食事をする時に使う意識や感覚の広がりが増え、職員もそれに気付くようになりました。
この意識や感覚の広がりを、継続的に気付き伸ばしていくことでA様の表情は更に豊かになり、より笑顔が増えるようになると思います。
安全に食事をする意識はA様にもあるが、現段階では食事による窒息リスクが高い事には変わりがない為、今後も状況に応じた付き添い、見守り、静止対応を続け、A様の意識がさらに行動に反映されるよう、継続的な日常の様子確認と食事中の支援が必要であると思います。
限られた情報と期間で、いかに本人の望む生活に気付き、近付き、また安全にその状況を次の生活へ繋げていけるか。
今回は、食事に課題のあるA様と共に、安心して笑顔で食卓を囲めるような環境づくりを進めてきました。
環境を築く中で、A様の本来の生活の場面を整理しながら、本人の能力を改めて見極め、
根拠に基づき統一された関わりをする事により、A様の感覚や意識、意欲や感情の広がりが、
目に見えて分かるようになり、同時にA様の笑顔も増えました。
今後はどのテーブルも、笑顔の食卓になるように、それぞれの利用者の広がりに日々気付き、寄り添えていけるように努めていきたいと思います。