CHIAKIほおずき
2013年度テーマ「体調管理をケアに活かした取り組み」
⑥ 『2013年度最優秀賞』
「心の健康を取り戻そう」
発表者:I・MCHIAKIほおずき姫路津田
ショートステイ
目的
対象者 N様 要介護2
身体面
歩行状態は杖歩行
聴力は大きな声で聴こえる
視力は普通(眼鏡使用)
排泄は、尿意、便意有。誘導等一部介助が必要
アルツハイマー型認知症
N様の紹介
夫婦で生活しており妻が介護を行なっていたが、妻が体調を崩し、現在は長男夫婦が主な介護を行なっている。
以前の施設で職員に杖を振り上げる行為があり、利用中止、その後H24年6月下旬より当施設を利用となる。
本人は聴力の低下による不安や苛立ちからか大きな声を出す事がある。
テーブル席に座ると指先でテーブルをコツコツと叩く、両手を拍手のように叩く事があり、
意思疎通が上手くいかない時に杖を振り上げる行為がみられる。
周囲の利用者からは「あの人怖い」「病気やからかわいそうやねぇ」等の声があり、
家族からは気が休まらないと介護が負担になっている様子があった。
ショートステイの利用回数を増やすに伴い、家族、ケアマネ、主治医と相談した結果
H24年8月下旬リスパダールの服用が開始となる。
H25年10月初め、周囲のトラブル減少と同時に日中の傾眠が増え、ADLの低下がみられる。
H26年1月よりロング利用となりGHの申し込み中である。
N様の日常
他の利用者様から孤立されておられる。
最終目標
リスパダールに頼りきらず、皆様との距離を縮めたい!!
方法
<ご家族様に情報収集・同意を求める>
・バナナ、お肉が好き
・体を動かすことが好き
・柔道をしていた
・警察官をしていた
・退職後は教習所の教官
・寡黙で穏やかな性格だった
・友人と出かけていた
・書道をされている(奥様は書道の先生)
・縁側で過ごすのが好き
・トイレへ行く時は必ずスリッパを履く
・机を叩くようになったのは認知症が発症してから
・自宅では夜間は起きない(ふかふかの布団)
<体調管理について主治医との相談>
リスパダールは過剰な投与になると嗜眠状態になったり自発呼吸の抑制に繋がる。
血圧が下がる事も便秘になる事もある。
本来は精神科等で処方される薬だが、最近のリスパダールの使い方は、介護で困っているから使う事が増えてきている。
「少量で維持するのが良いかもしれない。」
ほおずきの施設でリスパダールの使用状況を情報共有しても良い。
↓
★前期計画
リスパダール使用は2日に1回まで。退所日は使用しない。
家族からの情報を基に、N様との関わり方を試してみる。
日中の活動量を増やし夜間の良眠を目指す。
机を叩く行為・大声・音により、他者を不快に感じさせない。
センター方式D-4(24時間生活改善シート)を用いて本氏の状態を探る。
ADLの維持・強化を目指す。
笑顔の時間を増やす。
・運動を取り入れたコミュニケーション作り
・大好きなバナナをおやつに
・自宅の縁側の居心地を再現できるようにソファの近くに足置き台を設置し、足を上げての日向ぼっこ
・教習所の冊子を読んでいただく
★中間評価 見直し
活動量⇒ 日中の傾眠時間は減少するも夜間の睡眠は浅い、 手を動かす動作がある体操には意欲的に参加される
机を叩く行為、大声、音対策⇒ レクリエーションの参加にて一時的に緩和、 音楽のリズムに合わせて手を叩く事がある
ADLの維持・強化⇒ 歩行のふらつきが軽減した
笑顔の時間を増やす⇒ 他者交流や言葉かけに対して笑顔がみられる事が増える、 好きな食べ物を提供する事で笑顔になる
その他気になった事⇒ リスパダール服用時とそうで無い時の血圧の変動
★後期計画
『脱リスパダール!!!』
レクリエーション(書道・ボール運動等)体を動かす機会を増やす
手や机を叩く行為の時、手拍子を刻みやすい音楽をかける
他者との場所を近くする(会話できるように配慮)
血圧確認・便通状況確認の継続
笑顔を増やす
・N様の手元にマットを置き、机の音を軽減
・他者と近い席へ⇒仲良くなられた方がN様が机を叩く音を聞いてマットを持っていってあげられる事も…
・寝具の整備
・書き取りのプリントに取り組まれている間は10分程集中されていました
(字を書く延長で書道にも取り組みました⇒筆を持たれると姿勢や手つきが変わられました)
・レクを通じながら楽しく手を叩けるように
・職員と手を触れ合いながら歩行してコミュニケーションを図る
・利用者皆様と輪になってカルタ取りを楽しまれる⇒血圧の上昇、便通改善がみられるように
結果
現在では…
・リスパダールは12月下旬より使用せず
・便通の改善(3日に1度⇒ほぼ毎日)
・感情の起伏が穏やかになった
・机を叩く動作はみられるが発する音が静かになった
・夜間、自宅と変わらず良眠できるようになった
・女性をねぎらう言葉がみられるようになった
・威圧的な言葉を言わなくなった
・日中の傾眠はみられる(減少はしている)
・表情が穏やかになってきた
・血圧の上昇(高い時があるので様子確認必要)
リスパダールを抜く事で、目に見える数値(血圧・排便状況)は変化がみられたが、
本氏の内面に関しては、ケアで関わりを持つ事をしなければ大きな改善に結びつきにくい事が分かった。
また、関わり方を皆で考えて実践する事で、本氏に対する恐怖心が薄れてきている職員が多くなった。
本氏が発する音は本氏の孤独感等が深く影響していたのでは無いかと感じた。
コミュニケーションがとりやすい環境が増えた事で、本氏も感謝する場面が増え、
お互いに信頼関係が増した事も考えられる。
まとめ
今回の取り組みを通じ、リスパダールを使用する事で
本来の介護で行えるところまで薬に頼っていた事を強く感じた。
介護で行なえないところを医療に頼り、医療でできないところを介護が行なう事で、
利用者のそのひとらしい姿がより見えてきたように思う。
また、職員が利用者への関わり・歩み寄りを継続する事で、
職員の内面的な不安も軽減し、それがより深い信頼関係に繋がっていくことも分かってきた。
一方で、利用者の課題に対して、統一されたケアが必要であったが、
チームケアの力不足もあり上手く改善に導けない場面もあった。
今後にむけて
現在N様の生きがい作りを模索し、ADLの維持と向上、
笑顔作りを継続し認知症に負けないN様らしい姿がみられるよう取り組んでいる。
血圧の変動もまだあり、今後も主治医との連携をしっかりと図りながら
本氏・家族が笑顔で生活できるように支援していきたい。
また課題である、チームケアの向上としては、やはり軸となるケアプランを
職員がしっかりと把握していく必要があり、在宅介護での課題をショートステイでも
しっかりと改善していけるようにしていきたい。