CHIAKIほおずき
2014年度テーマ「食べる」を視点にケアを考える
⑧ 『2014年度最優秀賞』
「豊かな生活作りをめざして」
発表者:K・YCHIAKIほおずき姫路津田
ショートステイ
目的
対象者 S様 日常生活自立度 認知症 Ⅳ 身体機能 C1
利用者の食について、自宅での課題とデイサービスでの課題を把握し、それらを改善、またより良いケアとして支援を行うことで、
食の質の向上を図り、その事で利用者・家族の生活が豊かなものになる事を目指します。
S様の健康状態
・平成25年自宅で転倒骨折し動けなくなる。
・長男が介護していたが褥瘡が悪化し平成25年12月に入院。
・褥瘡部位の治療と、骨折後の血流悪化により右膝壊死にて切断。
・状態安定した為退院、褥瘡は完治しておらずバルーンカテーテル留置。
・退院後平成26年9月よりデイサービス週3回利用となる。
・家族からは、入浴による清潔保持希望。
・自宅ではプリン、ヨーグルトしか食べない。→褥瘡を治す為に必要な栄養素が足りない。
方法
食前の口腔体操→嚥下機能への刺激
食事環境の見直し→食事意欲の向上
褥瘡状態の確認→完治を目指す
Sさんに対してのこちらからのアプローチにおいては、一方的な行為とならない様、Sさんの本来あるべき姿への配慮やSさんと、
ご家族との信頼関係を大事にする事を念頭に、無理の無い範囲で行うこととしました。
<口腔体操>
・席の位置を日当たりがよい席にし、右利きなので右側からの介助ができるように
・不安や悲しみの感情になりやすい為、言葉をかける頻度を多くし笑顔作りを心がける
・Sさんは活動の促しに対して自発的に活動する事が難しい為、職員のマッサージで対応
<食事形態について>
・ご飯の硬さは普通
・副食はキザミ(小)にて用意
・水分にトロミは無し
⇓
・咽る事はなく、口に入ると咀嚼は安定している。
・甘みのある物は他のものより食べられる為、まずは甘みのあるデザート類を口に含み当日の反応を確認する事に。
・職員がめまぐるしく変わらないよう一定期間担当を決めて食事介助。
食事量の変動
9月後半から10月中旬までは食事量も増えてきましたが、それ以降食事量が減少。
11月初旬頃より自宅やデイサービスで左耳から耳垂れが大量に出ており、平熱も上昇している期間が3週間程続いていた。
その症状はおさまるもそれ以降摂取量は目に見えて減っており、スプーンを口元に近づけても口を開くことが少なくなった。
対応策→
氷水で冷やしたスプーンを使い唇と舌を刺激し口の開閉と咀嚼・嚥下機能の維持改善、を試みる事に。
唇へのアイスマッサージが口の開閉に繋がったのか、マッサージ後に介助すると口を開けて食べられるようになりました。
結果
現在では…
・不安な表情が消えて笑顔が増えた
・会話の受け答えが成立する場面が増えた
・褥瘡が完治した為バルーンカテーテルが抜去できた
・関わりの中で「兄ちゃん、お父さん」等の聴きとれる言葉が増えた
・まだ結果としてはデータが少ないが、食事量は増えてきている傾向
まとめ
アンケートを通じて家族の方が食事に対しての本人の意欲や質(安全、安心、栄養)等について
常に工夫をされながら対応されている事が分かった。
またSさんのように食べる事への意欲低下に対するご家族の不安等がある中で、
Sさんに負担が少ない食事の方法や心身の健康を保っていく為の工夫等、
ご家庭での状態状況を具体的に知る事の大切さと、ご家族と一緒に計画していく事の必要性が分かった。
食べるを視点にケアを考える〟というテーマを受け、Sさんへの取り組み当初は
どのようにすれば食べてもらえるのか?
という事ばかりに焦点があったが、今振り返り感じるのは、食べる為の機能や栄養状態の把握、維持・改善を支援すると同時に本人の安心や、
笑顔がうまれる状態をご家族と一緒に考える時間が結果として利用者本人の健康で豊かな生活づくりと変わっていくのではないかと感じた。
今後に向けて
DSでの食事とエンシュアからの栄養摂取状態を確認しながら、
Sさんにとって最適な食事バランスを調整。
食事介助については利用者の、残された機能を着目し、その機能の維持・向上に
むけての支援を計画的に実践。
今回ご家族の日々の食に対する工夫や健康に対する想いの強さを知った一方で、
不安だけが残されてしまわない様、私たちもさらに努力していこうと思います。