CHIAKIほおずき
2016年度テーマ「入浴・身体の清潔保持」
⑮
「清潔保持。(拒否がある方)」
発表者:K・KCHIAKIほおずき姫路香寺
グループホーム
目的
対象者 H・T様 80歳 介護度3 男性
- 心理的特長
• 寒いのが嫌い。
• 便秘の際は、不機嫌。 - 環境的特長
• 脱衣室が少し乱雑。
• 声掛けのタイミング・人・入浴時間 - 身体的特徴
• 歩行:独歩
• 髭:かため
• 右肩:昔、野球をされていたため痛みがある。
• 腹部:便秘症
• 皮膚:乾燥肌・かかと・すね(ガサガサ部あり)
3つの視点を複合的に考え、3方向から利用者様の清潔保持を考え、より気持ちよく・安全に、尚且つ心身面を職員が理解しながら取り組んでいく事を目標とする。
<高齢者の清潔保持の基本姿勢>
① 皮膚の清潔を保持することは、皮膚の新陳代謝を高め、感染を防止する。
➁ 清潔ケアを行う場合には、利用者様の清潔習慣を尊重し、利用者様の同意を得てからケアを行う。
③ 手早く清潔ケアを行い、寒さを感じさせない。
④ 清潔行為を通してリハビリも兼ねる。
⑤ 利用者様のコミュニケーションの場でもある。
方法
■実施内容■
<心理面>
- 入浴の拒否があった際、どのような発言があったのか、スムーズに行えた時の対応の仕方などを職員で情報共有。
- 拒否があった場合・うまくいった場合の時の言葉を拾う。コミュニケーションをしっかり・キーワードを見つけていく。
- ノートに拒否があった場合(青字)・上手くいった場合(赤字)と細かく記録。
- 自分で行えることは「何か」もしっかりと
- 声掛けのタイミング・時間・排便-何日目かも考慮。
- 故郷の話をすると笑顔になられる。
- 服を脱ぐときに寒いという理由でまた、肩を上げて脱ぐ際、少し脱ぎづらく不機嫌に。
- 便秘の時-4日目の時は拒否が強い。→主治医と相談
- 昼食後時間をおいてからの方がよい。
- 仕事の話をしながら服を脱いでもらい気をそらす。
- 足浴から始める。
- 湯船が見える位置に椅子を置き、お話をする。
- まずは、湯船に浸かっていただいてから…
- 女性職員・男性職員とも拒否する確率は同じくらい。
<環境面>
- 脱衣室が乱雑という事もあり、お風呂と分かりにくい環境ではないかと考え、整備を行う。
- 入浴の準備を念入りに!
- 脱衣所の温度設定22℃
- 湯船の温度設定41℃を統一。
- また、トイレが横に設置しているため、トイレ誘導後(排泄後)にすぐに脱衣室に誘導。
- まずは、湯船を見ていただきお風呂に入ることを認識してもらう。
- 脱衣室を少し暗く。(夜と認識してもらう。)
<身体面>
- 拒否があり入浴されない時は、蒸しタオルで顔を拭いてもらう。その行為自体は、あまり拒否がない。
- 耳の後ろも等…声掛け続け自らしていただく。
- また、そのまま腕や身体も拭いてもらう。(機嫌が良ければ)
- 陰部の清拭は、便汚染があったときのみである。
- 高齢者の皮膚の特徴
→皮膚が乾燥する。かゆい、傷つきやすい。
→皮膚が弱くなる。少しの刺激で皮がむける。
→皮下脂肪が減少する。褥瘡ができやすい。
→しわやたるみが多くなる。垢がたまりやすい。
→爪がもろくなる。はがれやすい。
- 乾燥肌のため保湿クリームを塗る。特にかかと部T字剃刀は、痛みがあり、電動に代替え
■評価・中間報告■
<心理面>
- ノートの情報共有は、記録に残り参考になる。
- 話をしながら、誘導・脱衣を行うとよい。
- 服を脱ぐ前に何かをしてもらう方がよい。
- 入浴しようという意識を高めるものは何か?
<環境面>
- 整理整頓は、よかった。スムーズに準備ができるようになった。
- 温度設定は重要。(室温・湯)
- グループホーム以外の場所ではどうか?
<身体面>
- 顔を拭いたりするのは気持ちがよいとのこと。
- 自ら色々と拭いたりしていて、声掛けのみで自ら行えていた。
- 爪・かかと・臀部等の状態把握が細かく出来た。
- 脱ぎやすい服でしてみてはどうか?
■改善・再取組み■
<心理面>
- 清拭(顔を拭く)から始めて、統一して声かけてみる。
- 仕事のお話や故郷のお話をしながら介助することは、継続。
- 便秘に関しては、お薬の調節や運動・食事に気を付けていく。
- 機嫌が悪い時は、対応職員を変えながら実施。
- 苦手意識を持たず、チャレンジする。(無理強いはしない。)
<環境面>
- 環境の違う場所(デイサービス職員にも協力してもらう)に誘導し入浴の声掛けを行う。
- 匂いで入浴意識を高める。(入浴剤を色々と試してみる。)
- もう少し掃除は必要(GH/DS)なので今後も実施。
- 温度調整は継続する。室温は、初めはもう少し高めに設定する方がよい。(寒いという発言有り。)季節を考える。
<身体面>
- 上着を前開きの服で着脱行為をしてみる。
- その他、出来ることはしていただくよう声掛けを続ける。
- 発疹や掻き傷、赤みがないかも注意深くみていく。そのような症状があれば、看護師や主治医に報告する体制を。
- 髭剃りは電動で継続。
- 尿汚染等の状況把握も行う。
結果
利用者様変化(良かった点・悪かった点)
- 良かった点
・入浴拒否の回数が減った。
・拒否や不機嫌な表情からでも好きなお話をすると表情が良くなることがあった。
・デイサービスの大浴場は、スムーズに入浴できた。
・脱ぎやすい服では、自ら脱がれることもあった。
・足のかさつきが軽減した。
・入浴後の表情が良い。
- 悪かった点(今後の改善の余地)
・入浴時間が少し長くなったので疲労感も見られた。
・顔を拭くだけで終わることや足浴だけで終わることもあった。
職員変化(良かった点・悪かった点)
- 良かった点
・声掛けの工夫をするようになった。
・職員の意識統一と情報共有する機会が増えた。
・少しでも気持ちよくなってもらう事を第一に考えられるようになった。
・3方向を複合的に考えられるようになった。
・入浴以外でもよく話をするようになった。
・出来ることは何かを考えられるようになった。
- 悪かった点(今後の改善の余地)
・身体面だけを綺麗にしただけで満足していた。
・入浴に入ってもらえさえすればいいという思いもあった。
・もっと思いを引き出せたのではないか。
・もっと高齢者心身面を理解すべき。
・口腔内・耳・陰部の細部まで目がいっていなかった。
まとめ
■まとめ・考察■
・入浴=清潔保持というわけではない。代替え案を考え、また高齢者の心身状態をまず理解した上でのケアが必要になってくる。
・「なぜ拒否が出るのか」3方向(心理面・環境面・身体面)からの視点より、一人ひとり違う事を理解し、個別の対応が必要。
・ケアプランにもしっかりと取り入れる。
■今後に向けて■
・3方向からの視点は継続する。職員との情報共有は欠かせない。
・他の方にも使える対応策はないのかを考えていく。(拒否有り無しに関係なく)
・ある程度マニュアル化をし、職員統一を図る。
・入浴後の対応もしっかりと行う。
・陰部・臀部に関しては、パットの状況なども含め、褥瘡の予防の観点にも目を向ける。
・出来るところをその人から探し出し、自らしていただくよう支援する。(自立に向けた支援)