CHIAKIほおずき
2016年度テーマ「入浴・身体の清潔保持」
②『2016年度最優秀賞』
「私にできること」
発表者:Y・ACHIAKIほおずき揖保川
機能訓練指導員
目的
対象者 Y様 80歳 要介護5
・夫と二人暮らし
・週3でDS、2週間に1回のショートステイ、訪問看護の利用
・H22年に進行性核上性麻痺の診断
・H28年には、大脳皮質基底核変性症の疑いも診断される
・現在、左上下肢不全麻痺、左手指拘縮が強い。
支えがあれば座位保持可、介助による立位保持1分程度可。
会話はできるが言葉は出にくい。言葉の理解はできる。
<<現状の入浴におけるサービス>>
(現在の計画書)
長期目標:自身で洗身行為ができ、清潔が保てる。
短期目標:できるところは自分で洗う。
(支援内容)
→行える部分の範囲で動く右手でフェイスタオルを持ち、胸のあたりと頸部、
大腿部を洗う。
→不十分なところも含め、残りの部分を介助にて洗身する。
(支援状況)
→フェイスタオルを手渡し、声掛けにて手の届くところを撫でるように洗う。
不十分なところは、介助を行う。
~既存プランの現状評価~
・今ある能力を使った支援を行っているが、残存能力を使うだけでなく、
その機能維持や自分でしてもらうことの意味を理解して支援できていたのか。
・生活のスタイルや入浴状況、思いの汲み取り部分が不十分であったのではないか。
・本人様の思い、残存能力の再確認
・在宅の浴室、支援環境の確認が必要。
現状から今後に向けて、ケアマネ、訪看、娘様に報告し、今ある
機能の拡大、洗髪洗身部分について、現場スタッフを含め情報を
共有しました。
~本人の思い~
・少しくらいであれば、手も足も動くので、身体を洗うこともできる。
・病気でだんだん身体も動かなくなるのが辛い。でも、出来るのであれば、自分で洗いたい。
・夫はせっかちで、すぐに怒るので、ほとんど話をしない。
(ケアプラン入浴支援の見直しと再共有)
・在宅入浴における環境と支援の状況の確認を行う。
・自己遂行の意欲が活かせる支援内容の検討を行う。
~環境確認~
・自宅内移動は車いす。
・自宅内段差部には、スロープがそれぞれ設置している。
・浴槽には、手すり等取り付けている。
(以前は、バスボードを使用して入浴できていた)
・入浴動作に関しては夫が全面に介助していた。
<<自宅訪問>>
・ゆっくりと自分のことも出来ていたが、病気の進行により、
ほとんどの動作ができなくなってきた。
・自分の身体の負担と病気が重なり、全介助での入浴が難しい
(以前は、福祉用具も利用していたが・・・)。
・じっと、妻の行動を待つことはできない。
・話しかけても、めったに返事をしてくれない。
~夫の思い~
自宅訪問による課題分析・評価
・移乗、移動動作は全て全介助。
・左半身の拘縮が強くなり、姿勢保持能力も低下してきている為、
介助が大変になってきた。
・ほとんど話をしなくなった(言葉が出にくい、すぐに反応がないので待てない、夫は難聴)。
・本人様の身体機能の悪化と夫の加齢と持病が重なり、自宅での入浴介助は負担となっている。
→夫の妻に対する能力の認識部分やコミュニケーション不足の他、
本人様を取り巻く環境面(夫の介護力含め)から、本人様の意向に沿った自宅での入浴は困難な状況。
方法
<<出来ること(残存機能)>>
・右手の伸展はできる。
・声掛けにて協力動作ができる。
・右腕の上下動作、右肘は肩の位置まで上げることができる。
・支えがあれば座位保持できる。
・自分の意思の伝達および決定ができる。
→その、できる能力を踏まえて…
~新しい支援のポイント~
・姿勢動作の検討
・洗身用具の検討
・活動能力の維持、向上
長期目標:洗髪、洗身は自分でしたい
短期目標:①洗髪できる範囲が広がる
②洗身できる範囲が広がる
実施期間:H28年11月~H29年1月の3ヶ月間
短期目標①:洗髪できる範囲が広がる(H28年.11月~H29年.1月)
(支援方法)
・レクリエーションにて首や上肢の体操を取り入れる
・頭全体が洗えるように、頭の角度を変えて練習
・全体の可動域体操を行う
・手のひらにシャンプーをのせることで、自分で頭につけて洗髪をおこなう
・自分で洗うかどうかの確認を行う(体調や体力面を含めて)
(実施状況)
・洗髪前に自分で出来るかの確認を行う
→「洗う」と本人様より、意欲的な言葉が聞かれた
・体操を利用毎に本人様の意思確認を行いながら行った
→「頑張る」と本人様より
・実施後は、「疲れた」との言葉があった
短期目標②:洗身できる範囲が広がる(H28年11月~H29年1月)
(支援方法)
・全体での可動域体操をおこなう
・タオルを工夫する
・レクリエーションで上肢の体操を行う
・自分で洗うかの確認を行う
(実施状況)
・本人様の意思確認を行いながら、体操は積極的に取り組まれた
・タオルを合わせ、本人様の手に合う洗身用ミトンを作成
・洗身動作時は、自分で洗うかの確認を行った
→「自分でする」という、意思確認のもと実施した
・実施後は「疲れた」との言葉があった
結果
現在では…
<<短期目標①>>
首、上肢、可動域の体操を積極的に取り入れることにより、
頭全体を自分で洗うことができた。
しかし、手指や上肢の力が弱いため、頭全体の洗い直しは
必用であった。
→右手の握力強化や指先動作練習を検討する必要がある。
<<短期目標②>>
レクリエーションでの体操を行うことと、ミトンを使用する
ことにより、胸のあたりだけではなく、後頸部、大腿部、左腋下、
左腕を自分で洗うことができた。ミトンタオルの装着により、
少ない力でも洗えた事で、洗身の範囲が広まった。
→体操などで、可動域範囲の維持向上、現状の洗身範囲の確保。
→2つの目標を実施していくことにより、本人様の「できた」という
喜びの部分もあったが、2つの目標動作を続けることでは疲労感も見られた。
→体力を勘案した支援方法も検討していく必要がある。
■自宅訪問にて…
本人様の事例に対しての状況報告を兼ねて、自宅訪問をおこなった。
「自分でする」「頑張る」と言った本人様の意欲的な発言も含めながら、
本人様の状況等を写真を交えて説明を行った。
その結果、「ほんまなんや!頑張ってるんや!自分では何もしない。
出来へんと思っていたけど。私(夫)も自分の都合で介護せずに妻に合わせて
やってみます!」と話された。
本人様が”何もできなくなった。何もしなくなった。”と、ご主人の介護への
不安に対して、実際に訪問し、伝えたことにより、笑みを浮かべたご主人の
表情から本人への介護に対する気持ちの変化の部分を見ることができた。
まとめ
★目標に向けて、本人様の意思確認や意思の尊重を行いながら
実践したことで、「ちょっと出来たわ!」と少しでも自分で
出来たという目標に向けて取り組めた。
★また、自己遂行状況を具体的に説明することにより、家族様の
理解や在宅介護の支援への振り返り繋がることができた。
★本人様の意思確認を行いながら、洗髪や洗身動作を続けて実施
することにより、疲労感も見られた為、状態確認を行いながら、
動作量の調整も必要であった。
今後に向けて…
・「出来ることはしたい!」
「これからも続けていきたい!」という思いを汲み取り、
活動意欲に繋がったが、実施量の調整不足による身体的負担を見逃した。
リスク配慮面に注意した支援を心掛けたい。
また、生活動作の改善、拡大に繋げるなかで、自己遂行支援をサポートするために、
本人を取り巻く支援環境の調整及び関係機関との連携を密に図っていく必要がある。
・入浴することで、身体の汚れを落とすと同時に、本人ができないと思っていたことが
「私にもできた」ことで、心理面における心のストレス(老廃物)を洗い流すことにも
繋がった。
・事業所として、今後も身体状況により、行動目標にブレーキをかけてしまっている方の
思いの部分をとりこぼさない支援に努めていきたい。