CHIAKIほおずき
2017年度テーマ「よりよい食事環境」

発表テーマ

「自分らしい食事」

発表者:O・Y
CHIAKIほおずき神戸玉津
グループホーム

目的

対象者 Z様 77歳 女性 要介護4 認知症日常生活自立度Ⅲb

<Z様について>
・手芸が得意で女性的でとても器用な方。
・夫婦仲良く過ごされ、結婚されてからは、主人と日本国内や海外を仲良く旅されていたそうです。
入所されてからも週に一度以上はご主人が面会に来られ、公園へ散歩に行かれたりされています。
・性格は明るく、社交的。
・月に一度ぐらいのペースで自宅に外泊されることがあり、食事の際にZ様はほとんどご自身で箸やスプーン
 を持たれないため主人が介助されて食べられているとのこと。
・自宅でも食事中は落ち着きがなく、口の中に物が入っていても話をしてむせられるそうです。
◇ご家族様からのご要望で他の入居者様が食べておられる量ぐらいは食べさせてほしいとのこと。
<Z様の食事状況>
①食事形態は通常食で一口で入らない大きさの物は一口サイズにカットし、提供する。
②箸を使用し、少しずつ声掛けにより食べられる。自ら何口か食べられることが極まれにある。
③食事時間は基本的に45分から一時間ほどかかる。
④食事の際には、周りの人が気になり視界に入った人に対して話しかけられたり、
独語がみられる事あり。
◇現在のZ様の食事状況を踏まえて職員で何度も話し合いを行い、いくつかの課題があがりました。
<食事課題>
①箸をズボンの中に隠されることがあり、衛生的によくない。またお箸の認識がうまくできてないのではないか?
②食事中に周りの人に話しかけられたり独語があり、食事に時間がかかる。
③「これ食べていいの?」と職員に尋ねられ返事をしても、食べずに箸を置かれることがある。
④声掛けをしない限りほとんど一人で食べようとされない。
⑤食べ物を口に含みながら発語されるため、むせに繋がる。
⑥いくつかの食器を並べると大きな食器にすべての食材を入れようとされる。
☆これらの食事課題を解決するために案をいくつかにしぼり、実施しました。

方法

まず、課題を解決するために援助目標を設定しました。
<援助目標>
・自分で食事を食べていただく
・食事を集中して食べていただく
・静かに食事を楽しんでいただく
<援助目標を達成する為の方法>
①ワンプレートにて食事を提供し、お箸をスプーンにしてみる。
②囲いをダンボールで作り集中して食べてもらえるようにする。
③テーブルではなく、ゴザを敷きその上で食べてもらう。
④一人用のテーブルを用意し集中して食べて頂く。

結果

これらの方法を実施した結果
①の結果…
・スプーンをズボンの中にしまわれることはない。
しかし、食事時間はかわらず、自らスプーンで食べ物をとり食べようとされることもない。
・どうしても周りの人が気になり、動いている職員や他利用者の介助をしている職員の声に反応しその方向へ立とうとされたり、大きな声で話しかけられたりする。
②の結果…
・囲いの横から顔を出され話しかけられた。
・独語等は変わらず食事スピードも変わらなかった。
③の結果…
・試し始めは短時間集中し食べられる事もあったが、何日か続けていくうちに周りを気にされ始め再び、
独語やゴザから立たれようとする動きが目立つようになる。
・周りに人がいない状況では自らスプーンを持ち食べ進められる事がある事も発見する。
④の結果…
・少しの間なら集中して食べて頂くことができた。
・時間の経過とともに周りを気にされだし、話しかけられることあり。
・人の動きにはとても敏感で本人の視界に入らないところで動いていても、振り返られたり、話しかけようとする。
・食事の際の発語はあり、むせの可能性は引き続きある。

 

まとめ

気付いたこと…
・食事は静かに集中して食べないといけないか?
・本人がスプーンを置かれるまでは本人のペースを尊重し食べて頂く方がいいのではないか?
今回のZ様の支援を通じて、食事は静かに食べないといけないのか?と疑問をもちました。
普段私たちは、家族や友人、恋人とごはんを食べる際静かにたべるのか?みんなでワイワイお話をしながら食べているのではないか。
勿論、むせの可能性がある事は頭に全職員がおいておかなければならないが、Z様が周りに話をされるのは昔からそのような食事環境だったのではないか?
夫婦仲良く過ごされていた、Z様なら今日あったことを話されながら食べておられたのではないか?
そんな環境の中で何十年と過ごしてきた方が静かにそもそも食べないのではないか?と気づきました。
また、Z様の食事ではスプーンをすぐに置かれ、数分後にまた持たれ食べられる事があり、職員はスプーンを置くと、すぐにもって食べて頂くように指示することがありました。
しかし、スプーンを一度置かれても数分後に持たれるのであれば、そのペースを優先するべきではないか?
と気づきました。
つまり、利用者様一人ひとり、昔からつちかってきた食事の環境があり、その方の食べ方やペースがあるという事。
その方にとって良い環境や状況が「よりよい食事環境」だと気づきました。
冒頭に示した目標は私たち介護職員から見た目標であって利用者様から見た目標ではなかった。
3つの目標がZ様にとってベストな目標ではなかったのではないかと感じています。
集中して食べる。自分で食べる。静かに食べる。どれも大切な事ですが、私たちに一番大切な事は利用者様が楽しく食事を食べていただく事だと改めて気づきました。
<今後について>
さまざまな食事環境を作りながら食事をしていただいたが、どの食事提供法にも良し悪しがあり、Z様に合った食事提供法は今回見つかりませんでした。
これらの様々な支援を行い気づいたことは、利用者様のペースや食べ方に合わせる事こそ大切ではないかと考えます。
本人のリズムで食事を食べて頂く事がZ様のより良い食事環境であると考えます。
最後に、よりよい食事環境とは、職員が考えてアイデアを出すのではなく、
本人様が認知症を患う前の環境やリズム、習慣をできるだけ再現させて頂くことではないか?と思いました。
食事が楽しみとなり、精神的充足を得る。ご利用者様がほおずきで生活して良かったと言って頂ける
「えみのこぼれる家庭」につながると思い、職員一同努力していきたいと思います。