CHIAKIほおずき
2014年度テーマ「食べる」を視点にケアを考える

⑭ 『2014年度審査員特別賞』

発表テーマ

「五感で楽しむ食事メニュー」

発表者:N・M
CHIAKIほおずき加古川
グループホーム

目的

対象者 計18名の利用者様
食事をおだししても好き嫌いや偏食により残される方が多く、
特に魚料理、肉料理、青菜の野菜をよく残されていました。

食事を残された方が、空腹を訴え、つまみ食いや間食などが多くなりました。
その日の気分によって食事量にムラがある方が増えたり、
認知症の症状により、食べることに集中できず食事をまぜてしまい、
食べずに終わる方が増えました。

そのため様々な問題がでてきました。
・食事量にムラがあり残す量が多く、十分な食事がとれず、体重の減少。
・皮膚の状態も悪くなり、褥瘡や剥離が増える、
その為、ラコールやエンシュアなどで補い栄養補給をおこなう状況の方が増えました。

全体として、3食の食事量が減り、お腹が空くからおやつを食べるという悪循環がおき、
食事に対して楽しみが薄れ、食べるという意欲も薄れました。
空腹の訴えが強く落ち着かれない利用者様がふえました。
自分から食事を召し上がらず、介助が必要になり、ADLの低下につながってきました。

食事が「おいしい」「楽しい」と思う気持ちが生きる意欲につながり、明日への糧につながります。
ですが今の現状では食事に対する楽しみも薄れてきてます。
食べないから代わりに別のものを召し上がっていただくのではなく、
どうすればおいしくごはんを食べていただけるか考え…このテーマをあげました。

高齢者の食事は、ただの栄養補給の為に食べるのではなく、
「見て楽しみ、食べて幸せを感じてもらえる」ように、食卓の演出や食事の形状
、介助のしかたを工夫することが必要だと思い、
見て、聞いて、触れて、味わってと五感を使って楽しめる食事だったら、
ご利用者さまも食事をおいしくたのしく食べていただけるのではと思い、
献立を変え、調理方法も見直し、工夫も加えました。

方法

五感で楽しめるメニューはなんだろうと考えメニューを見直しました。
メニューに野菜、主にこんさい類、きのこ類、大豆製品、食物繊維が多いものを取り入れました。
また五感で感じてもらえる食材を考え、 苦手な食材をアレンジしメニューに取り入れました。

例えば、
全体的に茶色が多く、彩りが悪く似たような味付け。魚は、サバ、さわらが 多く、旬の食材が少ない

彩りを考え食材を選び、味付けをメニューごとに変え、旬の食材を使うよう食材を選びました。

以前           現在

洋食、中華が多い    →入居者の馴染みある和食中心へ
ワンパターンなメニュー →レパートリー豊富なメニュー
肉類が多いメニュー   →野菜を増やしバランスを考えた
調味料中心の味付け   →食事本来の味を活かす味付け

より利用者様好みの献立を目指し、全体的に洋食や中華料理が多かったので和食中心へ変更しました。
作りやすいお肉の炒め物など似たようなワンパターンなメニューが毎週つづいていたので
メニューのレパートリーを増やし、
お肉の量が多く、醤油の味付けが濃く調理されていたので野菜の量を増やし、
食材本来の味で食べていただけるように
薄味になるよう献立を変えてみました。

咀嚼、嚥下機能が低下してきた高齢の利用者様には食べやすい食品と
食べにくい食品があるため、より食べやすい食材を考えました。

食べやすい食品とは…柔らかく口の中でまとまりやすいもの。
適度に粘度がありのどにくっつかないもの
冷たいもの、温かいもの(体温に近いと口に入ってもわかりにくく嚥下反射が起こりにくい)

例として、あんかけ、プリン、茶碗蒸し、とろろ、桃、ヨーグルトなどです。
逆に食べにくい食品とは何かを考え…硬くてパサパサしているもの
水分が足りず、口の中で、モサモサしているもの
つるつるしている誤嚥しやすいもの

例として、のり、カステラ、こんにゃく、おからなどがあたり、
食べにくい食品を少なくして、食べやすい食品を多めにとりいれました。

次に調理方法を考えました。

食べ物の大きさ、固さ、粘度など工夫しますが、個人個人の食べるメカニズムのなかで、
どの機能が低下しているのかよく観察し、低下した機能をカバーするような調理方法を行いました。
例えば飲み込みにくく、むせやすい人にはやわらかくとろみのある食事にする
咀嚼が難しい人には、やわらかく噛み切りやすいものにするなど
、個人の状態にあわせ調理方法を変えてみました。
風邪などの体調不良のときなどその日の状態に合わせメニューを変更、
ご飯をおかゆにしたり本人様が食べやすい果物(りんご・もも・ばなな)などをそえ、
少しでも食べる意欲が出る工夫をしました。
咀嚼、嚥下状態に合わせ形態も変更し、 本人様の状態によって、
食べやすい大きさに切ったり、トロミの量を調整したり、ミキサー食にするなど形状を工夫しました。

見て楽しんで頂けるように、彩りを考え献立に取り入れた食材です。

色①

 

 

 

 

 

 

 

色②

 

 

 

 

 

 

例えば黒なら 黒ゴマ
赤なら ニンジンや梅干
緑ならねぎや絹さや
黄色なら卵やコーン
茶色なら揚げ物などを取り入れました。

盛り付ける食器などを料理によって変えました。

見た目①

 

 

 

 

 

この日の献立は サツマイモご飯 筑前煮 納豆とオクラの和え物 味噌汁です。

よそっただけの筑前煮…納豆が目立たない器…全体的に暗い印象をうけます。
筑前煮の器を大きくし食材がよく見えるように見栄えよく盛り付け、緑の枝豆をいれました。
納豆を明るい色の食器にすることで、おいしそうと見て楽しんで頂けるようもりつけました。

見た目②

 

 

 

 

 

聞くたのしみとして
利用者様の近くで食材を切り、興味を持っていただけるよう、
今日のごはんの話などコミュニケーションを図り調理する。
出来る方には一緒に切っていただくなどを行いました。
まな板で野菜をきる音、野菜を焼く音など調理中の音を聞いていただくことで、
自分たちが昔やっていたときのことを思い出して頂き雰囲気を楽しんでいただけるよう工夫しました。

ふれる楽しみでは季節に合わせて入れる器を変える
献立にも季節の食材を取り入れ、春夏秋冬を感じていただく
実際に食材に触れていただくことで、季節感を感じていただく。

香る楽しみでは香る食材をとりいれる(干ししいたけ しめじ 大葉 バジル 三つ葉などで、
干ししいたけのをもどしたときのにおい、香りを楽しんで頂けるように近くにもっていき
調理するなどで楽しんで頂けるようにした。

食べて美味しい!一緒に楽しいを考え、より利用者様好みの味付けにする。
特に和の味付けがよいかと考えていましたが、ケチャップやソースなどの味付けが好きだと
いわれる方が多かったため、洋風のメニューも取り入れました。
糖尿病を患っている方がいるので、薄味でダシをきかせる
お出しする料理によってなるべく異なった味付けにするなど。利用者さまと一緒に考えていきました。

最後に食べる環境を整えました。
テーブルごとに間をあけて、使用していましたが、テーブルをくっつけることで、
利用者様同士の距離を縮め家族の食卓のように大勢で食べ
わいわいと会話をしながら食事ができるようテーブルの配置を変えました。
各フロア合同でイベント食やお楽しみ食をおこない、食事で行事事を楽しんで頂けるよう計画実行しました。

食材に対して愛着を持っていただけるよう野菜を自分たちで育てる環境を作り、
野菜が育つ楽しみ、喜びを感じていただき食べる楽しみを感じていただきました。

結果

現在では…
・好き嫌いが多く、残すことの多かった方が食べるようになり、
全体的に食材を破棄する量が減り、ラコールやエンシュアなど飲む利用者様が少なくなりました。
・空腹を訴えることが少なくなり、穏やかに過ごされること多くなり、間食が少なくなりました。
・声かけで食事を促していた方、食事一部介助していた方が
自らお箸やスプーンを持ち、食べてくださることが増えてきました。
・フロアにあるメニュー表を見にこられることの回数が増えたことや、
台所まで来られ、今日のメニューや何を調理しているのか見にこられる利用者さまが増え、
料理を見て「おいしそう!」と笑顔で喜ばれ、利用者様同士でご飯中に会話されることが多くなりました。
・今まで会話もなくただ食べるという食事から、皆様笑みがこぼれ、
楽しんで食べる食事に変わっていたように感じました。
・皆様食べる量は増えましたがあまり体重が増加せず、太り気味だったかたの体重が落ち、活動的になりました。
・根菜類やきのこ類、大豆製品、食物繊維を多く含む物を取り入れたため、排便がすっきり出る方が増え、
下剤を追加で使用することが減り、処方も量が少なくなった方が増えました。
・食事制限されている方も空腹を訴えることなく穏やかにすごされることがふえました。

 

まとめ

今後皆さまによりよい食事を提供できるように、同じメニューでも個人個人に合わせた食事量や
食事形態などの工夫に努め、生きがい作りが支援できればいいなと思います。

また利用者さまにおいしいものをたべて頂きたいと思い、いろいろなメニューを作ろうと調理に取り組むなど、
パートナーの意識が大きく変わりました。

これからも利用者さまが「食べる」ことを楽しみだと思って頂けるよう、
五感で楽しむ食事メニューの開発調理の工夫を続けていき、常に笑みがたえない食卓作りを目指します!