CHIAKIほおずき
2014年度テーマ「食べる」を視点にケアを考える

発表テーマ

「笑顔あふれる食卓へ」

発表者:M・M
CHIAKIほおずき神戸玉津
グループホーム

目的

対象者 M様 要介護3
認知症日常生活自立度  Ⅲa
生活歴
①仕事を生きがいにされてきた
②趣味は読書
③独居生活が長かった 子供さんは2人

入居され3年目、最初問題なくお元気に食事をされていたM様ですが、
だんだんご自身で食事をして下さる事が減ってきている事に気付きました。
また、飲み物を提供させて頂くとM様はご自身で飲まれず、
テーブルの上にこぼされてしまう事やご自身で食事をされても途中で箸をおいてしまわれ
食事をそれ以上ご自身で召し上がられなくなる事が増えてきました。
この件を管理者よりグループホームの主治医と家族様へ報告させて頂きました。
主治医より体重の減少にも繋がりますし、まだまだお若いしお元気な方なので
認知症の進行もありますが、環境の改善を図っても良いかもしれませんと伺いました。
また家族様も同じ想いで是非施設の方で何とか改善をお願いしたいとのことで同意を頂けました。

そのため職員が、介助させて頂く事で食事を完食して頂いていましたが、
それでは自立支援のケアからは外れてしまうと感じM様はまだまだ出来る事は多いはずと
職員一同考え、以前のM様のようにご自身でご飯を食べて頂きたいと思い、
笑顔あふれる食卓へという目標を立て取り組ませて頂きました。

方法

最初になぜM様がご自身で食事をして下さらなくなったか原因を発見するために
10月の2週間の昼食の様子、メニュー、食前食後の様子を書きとめてみる事にしました。
また、水分も朝食、昼食、夕食の三食分とおやつ時にどのように摂取されているか
2週間の水分量、様子を書きとめてみる事にしました。
•水分、味噌汁はほぼ自力摂取されない
•単品食べされる
•お茶、味噌汁におかず等を入れてかきまぜられる
•皿の上にコップや味噌汁の碗をのせられる
•遊び食べされる
•途中で食べ方がわからなくなり箸をおかれてしまう

トレーの上におかずが数種類のっていたらM様がどれから食べたら良いのか
迷われてしまっているのではないかという意見が出ました。
そのためまず初めに、ご飯とおかずを一品ずつ提供させて頂く事にしました。
また、お茶、味噌汁におかず等を入れかきまぜられる、
皿の上にコップや味噌汁のわんをのせられる事があったため
同時に飲み物を提供するのではなく、最後に飲み物を提供させて頂くことにしました。

結果は、M様ご自身で初めは食べて下さるのですが、
おかずが一品ずつの提供だったためか時間がかかりM様が疲れてしまわれ、
途中でとまり、箸をおいてしまわれたり箸を逆さまに持ち考えこまれる事がありました。
この結果から、次に食事をワンプレートにして提供させて頂く事にしました。

ワンプレート

 

 

 

結果は、ワンプレートだったためか、見た目が悪くまた、白い皿のためかM様はトレーに
おかずを出してからそのおかずを食べてしまわれました。
白い皿では、M様にとってごはんが見づらいのではないかと考えました。

次にM様にごはんが見やすいように、白い皿から少し大きい緑の皿にかえて提供してみました。

緑の皿

 

 

 

しかし、結果は白い皿と同様に見た目が悪くごはんと皿の区別がつきづらく、
M様はトレーにおかずを出してからそのおかずを食べてしまわれました。
また、途中で箸をおかれて食べる事をやめてしまわれる事も改善出来ませんでした。

次に緑の皿でもおかずが見づらいのではないかと考え、
ごはんやおかずがM様の目につきやすいように緑の皿から茶色の皿に変えてみました。
皿の色だけではなく見た目がよくなるようにワンプレートでもごはん、
おかずがまざらないようにしきりがある茶色の皿にかえて提供してみました。

茶色のお皿

 

 

 

結果は見た目が悪くなる事もなく、M様ご自身で食べて頂けました。
しかし、M様はごはんの形状が食べづらかったためかこぼされてしまいました。
また、トレーの色と皿の色の見分けがつきにくく、皿の外側を箸で探られる事もありました。

そのため、次にトレーと皿の境がM様に見えやすくするために
黒のトレーから白のトレーへかえてみました。

白のトレー

 

 

 

ごはんは、そのまま盛り付けるのではなくおにぎりにして提供してみました。
M様は、白のトレーにかえてから茶色の皿と白のトレーの境を見極められ
皿の外側を箸で探られる事はなくなりました。
しかし、おにぎりをにぎりつぶしたり、箸で遊んでしまわれました。
おにぎりの大きさが、箸でつまみづらいのではないかと考え、
一口だいのおにぎりで提供してみる事にしました。
職員全員、同じ大きさにできるように一口だいのおにぎりの型を使用して
おにぎりを作るようにしてみました。

すると、M様は上手に一口だいのおにぎりを箸でつかまれ食べて頂け、
おにぎりをにぎりつぶされる事はなくなりました。

M様ご自身で、少しずつ食事をして頂けるようになってきましたが
同じ食席の前座の方の食事に手を出されてしまい、同じ食席の方と口論になってしまう事がありました。

M様は、座位に傾きがありご自身の食事より同じ食席の前座の方の食事が
目につかれてしまうからではないかと感じ、ティシュボックスに広告をはって
M様と前座の方との間においてみました。

しかし、広告が気になられ、広告をちぎってしまわれました。
M様が気にならないように広告からテーブルと同じような色の茶色の紙にかえて貼り
M様と前座の方の間においてみました。

すると前座の方の食事に目がうつらず、ご自身の食事に集中して食べて頂けました。
また、座位の傾きのためか、M様ご自身で食べ物を箸でつかまれて口に入れられるまでに
おかずを落とされ服を汚されてしまう事がありました。
傾きに対しては、クッションを傾きのある側におかせて頂き
できるだけ姿勢を正して食べて頂けるようにしました。

おかずを落とされて、服を汚されてしまう事に対して、
服の汚れを気にされ箸をとめてしまわれる事がありました。
そこで、服の汚れが気にならないようにM様のタオルでエプロンを手作りさせて頂きました。

すると、M様、おかずを落とされても服を汚される事がなくなり、
服の汚れを気にされる事なく、食事を食べる事に集中して頂けました。
食事の提供の仕方、食事をされる環境を整えさせて頂きましたが、
日によって食事をご自身で食べられたり、食べられない時がありました。
ご自身で食べて頂くだけではなく笑顔でごはんを食べて頂くためには
統一した介助の方法が必要ではないかと感じ、介助方法についても考えてみました。

食事の提供の仕方、環境をかえてM様がどのように食事をご自身で食べて頂けるようになったか、
職員カンファレンスをしました。

M様は、ご自身で食事をして下さるようになりましたが、
途中で疲れてしまわれ箸を止められてしまう事がありましたので、
無理をしてご自身で完食して頂くのではなく、疲れたら介助させて頂こうと意見がまとまりました。

そのために

①途中で箸がとまっても目線をかえる事で再び食べ始められる事があるので皿の向きを途中でかえさせて頂く
②水分はご自身では力のコントロールが出来ずこぼされてしまわれるため、食事中何度かにわけて介助にて飲んで頂く
③味噌汁、お茶はトレーにのせず介助する職員の手元に置かせて頂く
④最初の一口目を介助させて頂くとスムーズに食べられる事がわかったため
ご自身で箸をつけられない時は、最初の一口目を介助し声かけを行わせて頂く
⑤食事の途中でとまられる事があるのでそのつど声かけさせて頂く
という5点の介助方法を統一してかかわらせて頂きました。

結果

介助方法を統一してかかわらせて頂きましたが、
やはり日によってご自身で食事を食べて下さらない時もありました。
しかし、そのつど統一した介助方法でかかわらせて頂き全介助ではなく
ご自身で食べようとして下さり、「おいしい」と笑って下さりました。

今回、食事のケアで取り組ませて頂きM様ができないと決めつけて
すぐに介助させて頂くのではなく、環境やかかわり方をかえてかかわらせて頂くと
今まで見えていなかったM様が見えるようになってきました。

そして、介助ではなくできるだけご自身で食べられるようかかわらせて頂き、
食事は、暮らしの中で大きな楽しみの一つなのではないかと考え、
その楽しみを奪ってしまわずM様ご自身で食べて頂く、大切さがわかりました。

M様に、食事を笑顔で完食して頂け、栄養不足を防止し
病気を予防する事ができ健康を維持できると感じました。
また、M様に笑顔で食事をして頂けた事により食事をM様に楽しんで頂けたと考え、
生活をより豊かにし充実した生活を過ごして頂けると感じました。

まとめ

かねてよりわたくしども神戸玉津では合同調理と名うちひと月に一回、
利用者様、ご自身で料理を作る所からかかわって頂き皆様で協力して
料理を作りテーブルを並べ一緒に食事をとって頂くという取り組みを行っております。
それぞれの利用者様のADLにあわせ必ず何か一つかかわって頂くように分担する事で、
皆様、生き生きとして料理を作られ笑顔で召し上がって頂いています。

今後もこの取り組みを活かし、M様の郷土料理のお寿司が大好きだったと
家族様からアセスメント出来たので、M様にも料理作りからかかわって頂き、
お寿司の調理に参加していただきました。
職員が「殿様寿司」と声かけさせて頂くと笑顔になられご自身で調理したお寿司を食べて頂けました。
故郷の料理を食べて頂き少しでも昔を思い出して頂けたらと考えています。
また、最後まで食事をご自分で笑顔で食べるという喜びを失わないようにして頂けるように
引き続きケアを続けていきたいと考えています。

さらに、より良い介助方法を統一して行っていけるように定期的にアセスメント・カンファレンスを行っていきます。