CHIAKIほおずき
2014年度テーマ「食べる」を視点にケアを考える

発表テーマ

「心に寄り添った食事の工夫」

発表者:Y・A
CHIAKIほおずき姫路高岡
グループホーム

目的

対象者① K様 要介護2
(情報)アルツハイマー型認知症
糖尿病
膝関節に痛みあり
日中からの帰宅願望あり
<事例検討開始前の状況>
おかずをご飯の上に乗せ勢いよくかきこまれたり、肘をついた姿勢で召し上がられる
→その都度、姿勢の声掛けを行いおかずは一口サイズにして提供し口に運ぶ回数を増やしました。

糖尿病のため急激な血糖値の上昇に注意が必要
→毎食前に糖尿の食前薬を服用しました。また、急激な血糖値の
上昇を避けるためおかずは先に提供、その後ご飯を提供しました。

噛む回数が少ないための消化不良、水分不足による便秘(お茶があまり好きな方ではないため)
→便が四日間でなかったときは酸化マグネシウムを服用しました。

対象者② N様 要介護3
(情報)アルツハイマー型認知症
歌うことが好き
過去に誤嚥性肺炎あり
<事例検討開始前の状況>
水分やおかずを勢いよく口に入れ流し込むことがありムセが起きる
→ゆっくりと食べて頂くように声掛けを行いおかずは一口サイズにして提供。
水分にはトロミをつけて提供しました。
→ご飯はおかゆで提供しました(粒が義歯の間に残りムセが起こるため)
背をそらしたように座られたり円背なこともあり食事中の姿勢がムセの原因になっている
→食事前には一度、姿勢を正して頂き姿勢よく食べて頂くように常に声掛けを行っています。

”現在グループホームが抱えている問題症状”
・年齢に伴う咀嚼力の低下、嚥下能力の低下によるムセ、姿勢の変化
・おかずをうまく口に運ぶことができずこぼれたり、スプーンで一定量をすくえない。
・飲み込む前に口に次々と食物を詰め込む行為
・便秘
・体重の増加

このような意見がでた中で
「安全にかつ、楽しんで食事をして頂く」
ということを私たちは目標に掲げました

方法

K様への取り組み
「安全にゆっくりとおいしく食事を召し上がって頂きたい」
私たちは観察経過ノートを作成し、K様の日々の食事内容、
摂取量、食事時の姿勢やペースなどを記録しその都度カンファレンスを行い、
改善策を探していきました。

姿勢や食べるスピード
→声掛けを継続していきました。
→ご飯をおにぎりにして提供することで一口の量を減らし
ゆっくりと味わって召し上がって頂きました。
糖尿病の為、血糖値の急激な上昇に注意が必要
→急激な血糖値の上昇を抑えるために食事前に野菜を提供しました。

N様への取り組み
N様のムセはなくならず、顔が真っ赤になるくらいムセられる事も度々ある状態であった。
「ムセなく食事をおいしく召し上がって頂きたい」
そのため私たちは観察経過ノートを作成し、N氏の日々の食事内容、
摂取量、食事時の姿勢の様子などを記録しその都度カンファレンスを行い、
ムセに対する改善策を探していきました。

食べるペースが早いことについて
→小さなスプーンや食器も小ぶりなものに変更しました。
おかゆをかきこむことによるムセ
→1口サイズのおにぎりにしました。
水分のトロミが強すぎると無理に吸い込もうとされてムセが起きることについて
→トロミをつけすぎないため職員間でトロミの統一を行い
食事前に水分摂取して頂きました。
(トロミは水分200ccに対し小さじ1杯。ハチミツより少しサラサラな状態)
テレビを使った口腔体操は意思疎通が困難な本氏にとって理解が難しくされないときがある。
あまり意欲的でない
→歌うことが好きな方である。
早口言葉や歌などで意欲的に口を動かして頂いてはどうか?

結果

K様の現在は…
おにぎりにしたことで
→ご飯の上におかずをのせてかきこまれる事がなくなりました。
また、一口の量が減りゆっくり召し上がって頂けるようになりました。
ミニサラダを食事前に提供
→先に提供してみたが他の方との食事の違いが気になりなかなか召し上がられませんでした。
野菜ジュースにしたことで「おいしい」と自然に野菜を摂取されるようになりました。

そこで私たちは話し合いを行いミニサラダを野菜ジュースに変更し提供を行うことにしました。
また食物繊維の豊富な野菜ジュースを選ぶことで水分補給と便秘の解消にも繋がり
酸化マグネシウムの服用の頻度が減りました。
栄養バランスのとれた食事により予想外のダイエット効果も見られ、
膝の負担が軽減され歩行の安定にも繋がりました。(11月54kg→2月現在51kg)
以前のようにおかずやご飯を一緒にして召し上がられることがなくなり、
「おいしいわ」と一品一品をおいしく味わって頂けるようになりました。
野菜ジュースの摂取については気温の変化から
今度は便がゆるくなりすぎることがあったのでその都度、
野菜ジュースの量を調節し、臨機応変に対応しています。
食事のスピードについてもゆっくりになりましたが
まだ早いときがあるので、楽しい食事時間になるよう声掛けを継続しています。
帰宅願望は依然としてありますが食事を楽しみにし
三食しっかりと召し上がられることでGHでの規則正しい生活に繋がっています。
食べる事が大好きなK様にとってこれからも満足しておいしく食事を楽しんで頂けるよう、
努力していきたいと思います。

N様の現在は…
食器を小さくしたことにより器が小さくなり持ちやすくなったことで
左手で器を持つことが増えました。スプーン等を小さくすることにより一度に口に運ぶ量が減りました。
一口サイズのおにぎりにしたことにより一つずつ口にいれて召し上がられるようになりました。
トロミの統一を行ったことにより水分摂取によるムセの頻度が減りました。
また食事前に水分を摂取することで喉が潤い嚥下しやすくなりました。

早口言葉を記入した紙を作成し本氏に渡したときの反応は?
→「なんやこれ~」と興味を持たれ書いてある文字を口に出して読み上げられる。
また、昔を思い出すように歌を唄って笑顔になり意欲的に口を動かされるようになりました。

ゆっくり召し上がって頂くように声掛けを継続させて頂いているが本氏の理解が難しく、
また、何度も声掛けをすれば本氏にとってはしつこく感じたり
私たちの言葉の表現の仕方によっては気を悪くされることがあります。
安全にばかり目を向けるのではなく、食事の時間を楽しい時間にして頂くための私たちの工夫が必要です。
食事を次々に口に運ばれているときはやさしく手にタッチしたり、
笑顔でメニューを伝えるなど楽しい食事の雰囲気を演出しながら上手に間をとる工夫をしています。
間をとる工夫をした結果、食事を次々に口に運ばれる手が少しだがとまるようになりました。
しかし不用意な声掛けや飲み込む前に声をかけるなどタイミングが悪いとむせてしまうため注意をしています。
安全に食事をして頂くだけではなく食事の時間を楽しく過ごして頂くために
現在も本氏の気持ちに寄り添ったケアを継続させて頂いています。

まとめ

年齢を重ねても健康でいたい。
同じ長い人生ならおいしいものをたくさん食べて健康に楽しく過ごしたい。
誰もがそう思っています。
しかし高齢者にとっては疾病で一時的に運動機能が落ちれば、
活動の範囲が狭まり自分から積極的に動く意欲がなくなります。
その結果、更に食欲も落ちていくという悪循環に陥ることがあります。
食べる意欲をもち続けて頂くことは利用者様が健康で楽しく過ごす中で
必要不可欠なのではないかと思います。
人生において食べる事は楽しみと健康、人との繋がりなど多くの意味をもっています。
私たち介護職員は利用者様の「食」に直接関わる事ができるため
これからも利用者様の心に寄り添いその方に合わせた食事提供を継続していきます。
また、食事を通してあたたかい家庭での暮らしを
より実感して頂けるように日々、努力していきたいと思います。